
2018年3月10日に公開された映画「坂道のアポロン」。
長崎県・佐世保市出身の漫画家 小玉ユキさんの同タイトルの漫画が原作で、2014年4月にはアニメ化もされました。
1960年代の佐世保を舞台に繰り広げられる高校生たちのジャズがキーとなる青春物語は、懐かしさと甘酸っぱさ、そして何かに夢中になれることの尊さを思い出させてくれるピュアで心温まるストーリーです。
そのラストシーンに登場する教会が、長崎県佐世保市・九十九島のひとつ黒島に実在することをご存知でしたか?
そこは、国指定重要文化財であり、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」構成資産の1つとして2018年夏の世界遺産(世界文化遺産)登録された「黒島の集落」にある黒島天主堂(黒島教会)です。
今回は、原作からの「坂道のアポロン」ファンである私が、実際に黒島天主堂を訪れてみたので、“「坂道のアポロン」舞台探訪”としてご紹介します。
目次
「坂道のアポロン」で盛り上がる佐世保市
3月10日に映画「坂道のアポロン」が公開されたこともあり、街のあちこちに「坂道のアポロン」のバナーや文字を見かける*佐世保市。(*5月の取材時)
直線のアーケードでは日本一長いと言われる「さるくシティ4○3アーケード」にも大きなバナーが掲げられていました。
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JR佐世保駅構内の佐世保観光情報センターなどでは、漫画「坂道のアポロン」の舞台探訪ガイドノートや映画「坂道のアポロン」のロケ地マップも手に入ります。
漫画版は、原作者の小玉ユキさんのインタビューも掲載され、ファン垂涎のアイテム。
佐世保を「坂道のアポロン」目線で観光できるガイドブックです。
映画版は、佐世保市だけでなく物語の舞台として登場する長崎市や豊後高田市(大分県)まで広範囲にカバーされていました。各地を巡れば「坂道のアポロン」の世界がより堪能できるはず!
黒島へは相浦桟橋(佐世保市)からフェリーで50分
佐世保市内から黒島へは、黒島旅客船(フェリーくろしま)で渡ります。
佐世保駅から松浦鉄道で約30分、相浦駅下車徒歩6分で相浦港(相浦浅橋)へ。
相浦港(相浦浅橋)からはフェリーを利用して50分程度で到着します。
船着場である黒島港のすぐそばの黒島ウェルカムハウスには、こんな案内が出ていました。
黒島ウェルカムハウスでは、レンタサイクル(1時間300円~)も可能なので、電動サイクル自転車で黒島天主堂に向かうのも良いですね。
(台数に限りがあるので、事前予約がオススメです。)
詳しくはこちら。
ラストシーンで登場する黒島天主堂へ
港から教会までは徒歩だと約30分。島の景色を楽しみながら向かうことができます。レンタサイクルを利用すれば、坂道も楽々移動可能です。
訪れたのは、初夏の気持ちよく晴れた日。漫画「坂道のアポロン」を持参し、ワクワクしながら、お目当ての天主堂に到着しました。
遠くからもわかるレンガ造りの立派な外観。近づいて見ると、原作のシーンが一瞬にして目に浮かび、まさに今、自分が立っている地がその場所なのでは?と、思わずページをめくってしまいます。
このアングルが、漫画で描かれているシーンと同じ黒島天主堂のはず。
垣根の様子、入り口の松の木までが同じで、小玉さんの描写力のすごさを実感しました。
漫画の中の世界が目の前に現れる感動は、舞台探訪ならではの醍醐味ですね。
外観だけではモッタイナイ!中を見学すればつながるシーンも!

©2008 小玉ユキ/小学館
外観だけを見て漫画の舞台となった黒島探訪を終わりにするのは、もったいない!
黒島天主堂は、事前予約をしておけば内部の見学も可能です。
教会の入り口、ステンドグラスなどがっつり忠実に描かれていて、その再現度に驚きました。
扉を出たところの屋根、建物の基礎とレンガの違い、ステンドグラスの柄、内からと外からの見え方の違いまでがしっかり描き込まれていて、見比べれば見比べるほど、その描写力に感動しました。
そして、もうひとつ。
黒島天主堂の裏側、上からのアングルで描かれているシーンがあるのですが、

©2008 小玉ユキ/小学館
実はこれも、かなり忠実な描写。
私も黒島天主堂の裏側へと回ってみました。
丸みを帯びたデザイン、ステンドグラス、屋根瓦までが同じです!
明治35年に日本人信徒たちの手によって建てられた教会の中は圧巻
現在も島民の約8割がカトリック信者だという黒島では、実際に黒島天主堂で信者の結婚式が行われることもあるそう。
明治35年に日本人信徒たちの手によって建てられた教会は、西洋建築の中に日本の要素が取り入れられ、どこか温かみのある優しい印象です。
黒島の赤土を焼いて作られたレンガ、黒島特産の御影石の柱基礎、有田焼のタイルなどは黒島天主堂ならでは。
教会が多い神戸に生まれ育った私から見ると「ああ、ここは日本人のための日本の教会だ」と感じました。
長い歴史の中で日本人信者が祈りの場としてきたことが伝わってきます。
黒島天主堂は、こちらの記事でもご紹介しています。
黒島天主堂へは「坂道のアポロン」9巻を手にして

BONUS TRACK巻を含め全10巻の中では、決して多い方ではないかもしれません。
でも、そのひとつひとつの描写は丁寧で、存在感を放っています。
今回、黒島を訪れてみて、小玉さんがなぜ、ラストシーンに黒島を選んだのか、が解った気がしました。
そこは、この物語のように心温まる場所。

ぜひ、黒島を訪れる際は「坂道のアポロン」を読んでみてください。
出来れば、黒島天主堂へは9巻を手にして。
そうすれば、きっともっと黒島や「坂道のアポロン」が好きになるはず。
黒島天主堂(黒島観光協会)
長崎県佐世保市黒島町3333番地
インフォメーションセンター TEL 095-823-7650 (9:30~17:30)
※通常教会内は撮影禁止ですが、今回は取材として撮影許可をいただいています。
©2008 小玉ユキ/小学館
※漫画の掲載にあたっては、全て株式会社小学館の許可をいただいています。
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