
今、地方自治体の委嘱を受け、地域で生活し、各種の地域協力活動を行う「地域おこし協力隊」が全国各地で活躍しています。離島を有する地方自治体では、島での活動を中心に行う協力隊を募集しているところも。
地域おこし協力隊って、どんな活動をしている人たちなの?離島のニュースメディア「リトレンゴ」の読者のみなさまは、きっと気になっていることでしょう!
都市地域から過疎地域等の条件不利地域に住民票を移動し、生活の拠点を移した者を、地方公共団体が「地域おこし協力隊員」として委嘱。隊員は、一定期間、地域に居住して、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこしの支援や、農林水産業への従事、住民の生活支援などの「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る取組。
現在リトレンゴが総力取材している長崎県佐世保市黒島でも、「黒島地域おこし協力隊」が2015年4月から活動を開始し、幅広く活躍されています。
今回の取材では、「黒島地域おこし協力隊」として活躍中(任期は3年)の隊員おふたりにお会いする機会があったので、地域おこし協力隊に参加されたきっかけなどお話を伺ってみました。本記事では、おふたりにご協力いただき、「黒島地域おこし協力隊」がどんな活動(※)をされているのかをご紹介いたします。
※地域おこし協力隊の活動内容は、活動する地域によって異なります。
目次
黒島地域おこし協力隊ってどんなひとが活動しているの?
まずは、黒島地域おこし協力隊のおふたりについてご紹介。
おふたりは、実は、出身地は長崎でも九州でもない、そんな方達でした。
黒島地域おこし協力隊になろうと思ったきっかけや黒島での活動、これからについて聞いてみました。
離島なのに、人と会う機会が激増!?神奈川出身の山中さん
お名前:山中彩香さん
出身地:神奈川
黒島に来た時期:2017年4月
黒島地域おこし協力隊になる前の職業:生命保険会社営業→佐世保市嘱託職員
地域おこし協力隊に参加することになったきっかけは?
営業の仕事から転職を考え仕事を探す中で、転職サイトに掲載をされていたことがこの仕事を知るきっかけに。
もともと青年海外協力隊に興味があり、その国内版のようなものかと興味を持ち(実際にはぜんぜん違います)、調べる中で30歳の今、これまでの仕事の経験を生かしつつも、新たな土地で新たなチャレンジをしたいと考えました。
黒島に行こうと決めてからどんな事をしましたか?
黒島で活動中の隊員に島の現状を聞きました。
理想と現実のギャップは?
特にありません。
黒島に来て&地域おこし協力隊に参加してよかった事は?
今まで生きてきた中で、1年にこんなに色々な人とであったのは初めてではないかというくらい沢山の人と出会い、意見を交わせたこと。新しい世界に触れることができ、今までとは違う考えができるようになりました。
しかし、一方で「心に残るエピソード」を綴れるほど、まだ黒島に貢献できていないのが現実であり、悔しいところでもあります。
黒島の好きなところ
ふと立ち止まったときに感じるゆったりした空気とおせっかいすぎる島の人たち。
任期が終わったら?
4月からはじめたワークショップ(後述の「くろしまde遊び隊」)が何らかの形になるまでは、何年かかるかは分かりませんが、島で暮らそうと考えています。その後のことはまだ決めていません。
面白そうと飛び込んだ世界!京都出身の初田さん
お名前:初田育子さん
出身地:京都
黒島に来た時期:2018年4月
黒島地域おこし協力隊になる前の職業:調剤薬局事務員
地域おこし協力隊に参加することになったきっかけは?
もともと海の近くに住みたいと思っており、転職を考えて転職サイトを見ていたときにたまたま地域おこし協力隊という仕事を見つけ以前と全く違う職種ではあったが、面白そうだと思い応募しました。
黒島に行こうと決めてからどんな事をしましたか?
住居に関しては黒島の住居は佐世保市職員の方が手配してくれたので特にこちらで何かしたということはありません。
家電はほぼそろっていたのでこまごまとした日用品を準備したくらいです。前職が人手が少なかったこともあり黒島に行く前日まで働いていました。
理想と現実のギャップは?
島民の皆さんが想像以上に優しく受け入れてくださり、とても驚きました。
黒島に来た初日から飲み会に呼ばれ、今もたびたび飲み会によんでいただいています。
黒島に来て&地域おこし協力隊に参加してよかった事は?
黒島では漁業に従事しておられる方が多いので、おいしい海産物が食べられることでしょうか。
協力隊に参加してよかった事は、仕事でも日常生活でも色んな人の協力があって成り立っていると今まで以上に感じられることです。今後もし黒島を離れたとしても、自分の糧となって活かせると思っています。
黒島の好きなところ
景色!蕨展望所やアコウの木の先にある畑から見える海はお気に入りです。あとは星空が綺麗なところ。都会では見えない天の川も天気のいい日には綺麗に見えてお勧めです。
任期が終わったら?
任期が終わった後のことはまだ考えていません。これからは世界遺産という名前に頼ることなく黒島自体の良さを島外の人たちに紹介して何回でも黒島を訪れたいと思って頂ける島にしていけたらいいなと思っています。
黒島地域おこし協力隊の活動をご紹介!
観光ガイドや観光案内所などでのお仕事(普段の活動)に加え、黒島で行われる様々なイベントに協力隊として参加されています。
観光案内のお仕事
黒島が世界遺産に登録されてから観光客やテレビ取材が増えたそうです。
観光ガイド
山中さんは、黒島に訪れる観光客のガイドをされています。黒島天主堂はもちろん、黒島の名所をまわり、島の魅力を紹介されています。
また、ガイド向け研修の開催時には、黒島側の調整などを担当されています。
「黒島ウェルカムハウス」(黒島観光案内所)
初田さんは黒島観光の拠点となる黒島ウェルカムハウス(黒島観光案内所)で、観光案内や黒島土産の販売を行っています。
こちらのウェルカムハウスは、観光客だけでなく島民の方もよく訪れる憩いの場でもあります。
豆から挽いているコーヒーが飲めるので、島のおばあちゃんとコーヒーを飲みながらおしゃべりをすることも多いそうです。
黒島内外で開催されるイベントへの参加
黒島島内では、行事(運動会や夏祭り等)や観光協会が行うバザー等のイベントのお手伝いをされています。
地域おこし協力隊として行事内容への提案を行い、採用してもらえることもあるそうです。
世界文化遺産登録決定!「パブリックビューイング」

今夏、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が世界遺産(世界文化遺産)として登録されました。
佐世保市では、その構成資産のひとつ「黒島の集落」として、登録の可否が決まる大事なその日、中央公民館会場と黒島会場にてパブリックビューイングを開催。
黒島地域おこし協力隊として参加され、黒島会場で会議の様子と会場の様子を写真撮影。HPを制作している業者の方と連携して、当日はリアルタイムで黒島観光協会のHPとFacebookページにて情報発信されていたそうです。写真だけでは伝わりにくい会場の雰囲気などの情報も提供されていました。
当日や後日の投稿(Facebookページ)から、島の方々や関係者みなさんの喜びが十分に伝わってきます。
初田さんに当日の様子を伺ったこちらの記事、ぜひご覧ください。
新しい船のお披露目「新船式」
6月、黒島港で新しい船のお披露目「新船式」が行われました。
その新船式で、初田さんはある光景に驚かれたそうです。その時の様子について伺いました。
演歌を流しながら黒島港内を回る船。こちらが今回お披露目される漁船「来夢(らむ)」です。
新船式は、航海の無事をお祈りする儀式なのですが、それが今回、船の持ち主の方がキリスト教徒であるため、神父様による祈祷だったのです。船の安全と公開の無事を祈っていただきました。
黒島では当たり前の光景のようですが、初めて見る演歌と大漁旗と神父様という組み合わせにとても驚いたそうです。
この日は、島民の方に加え、ちょうど長崎国際大学の方達がフィールドワークで黒島に来られていて、初田さんが声をかけたところ、先生を含め20名近くの方が参加されたそうです。
ちなみに、船の名前「来夢(らむ)」は、社長のお孫さんのお名前だそうです。大体新しい船を作るときに自分のお子さんやお孫さんの名前をつける方が多いそうです。
島の食育イベント「お魚祭り」
お魚祭りでも、おふたりは大活躍!
子供達が釣りをする姿を撮影したり、島の人と一緒に準備や片付けを率先して行っていました。
「ながさき地おこマルシェ」
「よそもんが地のよかもん集めました」をテーマに、特産品や工芸品など地域一押しの「モノ」を集めたイベント「ながさき地おこマルシェ」など、島外でのイベントにも積極的に参加されています。
昨年(2017年11月23日〜11月26日)は、九州北部で活躍している「地域おこし協力隊」が、させぼみなとに集合し、小さなマルシェ「地域おこし協力隊の秋マルシェ(スピンオフ)」を開催。「島外不出!幻のふくれまんじゅう”」を出店されました。今年(2018年6月1日〜6月3日)の「第3回 ながさき地おこマルシェ in 長崎県庁エントランスホール」では、ロザリオ風ストラップの作成ワークショップを出展したそうです。
ワークショップ
山中さんは、くろしまde遊び隊 隊長としても活動されていて、「くろしまde遊び隊 かんころ餅をつくろう project」を発足。
6月には、島内外から参加者を募集し、もち米を植えるワークショップを開催しました。
また、黒島観光協会の企画として、黒島の生き物や植物を学びながらその生態系を守ることを目的とした海岸の清掃活動を主催されたこともあるそうです。
メディアのインタビュー対応
黒島を取材しに訪れるテレビなどに出演したり、各種メディアからインタビューを受けることもあるそうです。
今回の私たちリトレンゴの取材時にも、インタビューを快く受けていただきました。
でも実は・・・、このインタビューはカッチリしたインタビューではなく、
地域おこし協力隊のおふたりと、リトレンゴスタッフによる女子会としてお酒を交えながら、ゆっくり楽しくお話しさせてもらいました。
なぜか「リョーユーパン」や、「よりより」のケース(!)の話で盛り上がったり、
(気になる方はぜひ調べてみてください。九州(長崎)では有名なものです。)
島でパソコン教室を開き、キーボードの使い方や、ワードで資料の作り方を教えている話など、様々なお話しを聞くことができました。
黒島ではなくてはならない存在に!
山中さんは、島外から黒島の海岸に漂着したゴミを片付ける活動をなんと1人でされていた時期も。山中さんの呼びかけに島の方たちも応じてくださって一緒に清掃活動を行なったそうです。
(ただし、常に漂着するゴミには、今も悩まされているそうです。)

現在、島内には同世代の女性があまり多くないそうですが、年代関係なく島の人たちに溶け込み、頼られ、島の一員として活動されています。
地域おこし協力隊はどんな制度?黒島地域おこし協力隊についてもっと知りたい!
平成21年度に、89名31の自治体でスタートした地域おこし協力隊の制度。29年度には、4,830人が全国997の自治体で活動し、どんどん活動の幅を広げてきています。(数字は、総務省のページから引用)
「地域おこし協力隊」の名称を聞く機会も増え、認知度も上がってきてはいますが、実際にはどんな活動をしているのかを知る機会はまだまだ限られています。
自分もぜひ参加してみたい!という方は、ぜひ現役の隊員からお話を聞くことをオススメいたします。
地域おこし協力隊(全国):https://www.iju-join.jp/chiikiokoshi/
黒島地域おこし協力隊の最近の活動など、詳しくは、下記SNSやブログで更新される情報をご参照ください。
公式Facebookページ:https://www.facebook.com/96shima/
公式ブログ:https://ameblo.jp/ku6shima/
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