世界遺産黒島天主堂の島で共に育つ子どもたち〜黒島はまゆう学園に行ってきました〜

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2018年夏に、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産のひとつ「黒島の集落」として世界遺産(世界文化遺産)に登録された、長崎県佐世保市にある黒島。

リトレンゴ編集部は世界遺産に登録された黒島を特集するにあたり、

・人口400人の黒島に子供達は何人いるのか?
・また離島で暮らす子供達はどんな毎日を送っているのか?
・そして今は世界遺産として注目されている構成資産と、これまでどのように関わってきたのか?

など、黒島の子供たちのことをもっと知りたい!と思い、黒島はまゆう学園でインタビューをお願いしました。

また偶然にも「黒島はまゆう学園」は、全国でも数少ない小中一貫の義務教育学校。
2018年4月から新校舎かつ義務教育学校になったということで、幅広くお話をお聞かせいただきました。

世界遺産の島!黒島はまゆう学園とは

黒島はまゆう学園は、佐世保市黒島町にある義務教育学校です。

「義務教育学校」は、2016年に国が導入した、小学校から中学校までの義務教育を一貫して行う、新たな学校の種類の制度です。
小学校は「前期教育過程」、中学校は「後期教育過程」と呼ばれています。

黒島はまゆう学園の特色や生徒たちの事を知りたい

今回は黒島はまゆう学園のことを教えてもらうために、
後期教育過程(中学校)で数学を教えている戸田先生と、前期教育過程(小学校)で1・2年生を担当している吉原先生にお話を聞きました。

簡単ではありますが、先生たちのご紹介。

戸田先生は大村の出身で、過去に五島列島の中学校で生徒数5名の担任をしていたこともあるそう。
面白いトークや、生徒たちと一緒に笑い合い、生徒を楽しませてくれる先生。

吉原先生は美人で優しい雰囲気の先生。
黒島に住んでから、少したくましくなったそう。(虫など平気になりつつあるとのこと!)
複式学級という、2つ以上の学年をひとつにした学級を担当されています。
(前期教育過程は1・2年生が複式学級、3年生が単式学級、5・6年生が複式学級)

入学式の様子(提供:黒島はまゆう学園)

Q1:約400人が暮らす黒島ですが、全校生徒は何人ですか?また、生徒の印象を教えてください。

黒島はまゆう学園は、全校生徒16名です。前期教育過程(小学生)9名・後期教育過程(中学生)7名の小さな学校です。生徒たちの印象は、本当に素直で良い子ばかり。校舎も新しくなり広くて大変ですが、少ない人数で掃除も一生懸命頑張っています。

Q2:今年から義務教育学校として1年生から9年生が一緒に学ぶことになりましたが、生徒たちの反応はどうですか?

特に大きく変わったことはないですね。元々兄弟がいたり、島の行事で小さい頃から一緒に遊んでいるので全く抵抗はないようです。遠足に行った時は、1年生の周りに自然とみんなが集まり気遣ってあげたり、ルールを設けなくとも、みんな思いやりを持って過ごしています。

Q3:島の学校ならではの学びは?

黒島天主堂を見に観光客が多く訪れるので、
総合学習の授業で黒島の観光パンフレットを作っています。

昨年は黒島の魅力を存分に味わえる3つの観光コースを掲載し、
観光客の方にとても喜ばれました。感謝のお手紙を送ってくれた観光客の方もいて、生徒たちは役に立てたことをとても喜んでいました。

しっかりフェリーの時刻も記載してあり、日帰りの観光客も安心して楽しめるコースを考えています。

Q4:全校生徒16人。授業はどのように行われるんですか?

同じ教室で異なる学年が学ぶ「複式」クラスがあります。

人数が少ない学年は、同じ教室で異なる内容を学んでいます。
ただし、さすがに音楽だけは別々に行なっています。笑 (吉原先生)

Q5:義務教育学校の良いところは?

一般的に言われるメリットはこちらの3点です。

・自由度の高いカリキュラム設定(前倒しで学習することが可能)
・教員同士の情報交換
・小・中学生の交流による中学入学時のギャップの解消

私は中学校の数学教師なのですが、小学生にも数学(算数)を教えられることはとても楽しいです。今は6年生から9年生に数学を教えています。 (戸田先生)

あとは、職員間で小学生と中学生の文化の違いを知ることができること。
また小学校の入学式や中学校の卒業式など、義務教育学校以外の小・中学校の教師だと見届けられない晴れの日を共に迎えられることはとても嬉しいです。(吉原先生)

Q6:生徒たちは放課後は何をしているんですか?
まず黒島には、塾やお習字やピアノ教室といった習い事がありません。

なので前期教育過程(小学生)は、火・金曜日は学校で勉強をしています。
また、放課後学校で子供教室の「ひまわりクラブ」というものがあり、バドミントンなどスポーツやお菓子作り、ゲームなどを楽しんでいます。

他にも、キリスト教徒が島民の約8割を占める黒島ならではの「稽古」という活動。
宗教(キリスト教)について子供達に教える場であり、黒島では週に1回、前期教育課程(小学生)と、後期教育課程(中学生)に分けて行っているそうです。
黒島では世界遺産になった黒島天主堂に行き、神父さまのお話を聞いたり、掃除をしたり、教会で学んでいます。
(また子供だけでなく結婚間近の方に向けた特別な稽古もあるそうです。)

ちなみに生徒同士の家が離れているため、放課後に友達と遊ぶことは少ないみたいです。家では、ゲームをしたり、YouTubeを見たりしていますよ。

Q7:先生は黒島のご出身ですか?黒島に来た印象は?

いえ、長崎県内の異動で初めて黒島を訪れ黒島に住んでいます。
期間は、原則として3年島にいることができます。

黒島に住んで驚いたことは、ミサなどキリスト教が暮らしに溶け込んでいることです。
あとは、教材が簡単に揃えられないのは最初は困りました。今までは授業で必要なものが100円ショップですぐ手に入りましたが、簡単に用意出来ない分、工夫をするようになりました。(吉原先生)

私も、島外からきました。
生徒たちは、本当に素直で良い子たちなので、怒ったり注意するために大きな声を出すことがなくなりました。
また異動になった時に、大きな声を出せるか心配です。笑(戸田先生)

Q8:「黒島の集落」が世界遺産に登録された時、生徒たちはどんな様子でしたか?

結構、盛り上がっていましたよ。
ただ生徒たちは黒島天主堂や神父さまとの交流が当たり前にあることなので、それがすごいことだという実感はまだないのかもしれません。笑

これから、この世界遺産については、総合学習のカリキュラムに入れ学んでいく予定なので、世界遺産に登録された事の素晴らしさを少しずつ知ってもらえると思います。

Q9:地域の方との関わりはありますか?

はい、たくさんあります。明日(*)行われる食育をテーマにした「お魚祭り」もそのひとつです。
また神父さまや地域の方々と一緒に給食を食べたり、地域の方が先生となり授業をしてくれたりと、積極的に関わっています。

地域全体に、子は『宝』だと思っていただいており、地域に育ててもらっている印象です。

*7月上旬の取材時。

こだわりの新校舎を見学させてもらおう

なかなか学校に入る機会がないので、しかも完成したばかりの校舎とあって、そのキレイさや、こだわりに驚きました。

木材をふんだんに使って作られている校舎は温かみがあり、優しい気持ちになりました。
案内やクラスの表札も木で出来ています。

他の小・中学校と比べてちょっと珍しいのが、ランチルームと図書室。

ランチルームでは、全校生徒で給食を食べているそうです。

ランチルームでの給食の様子(提供:黒島はまゆう学園)

図書室は一般の方も利用ができます。木と緑が心地良い、素敵な図書室。

しかも、この図書室には畳のスペースもあり先生たちも驚いたそうです。

こちらは9年生(中学3年生)の教室。3人で学んでいます。

パーテーションを置いて、ひとつの教室で2つの授業が行われます。

ピカピカで広い体育館。実はこの広い体育館は、掃除当番1名と戸田先生で毎日掃除をしているとのこと。(おつかれさまです!)
「島魂」の大漁旗もかっこいい!

最後に

戸田先生・吉原先生へのインタビューは、島に暮らす子供たちや、義務教育学校のことなど、初めて聞くお話ばかりで興味深く、とても勉強になりました。
学校見学もゆっくり回らせてもらい、こんな素敵な校舎で、心温かい先生や地域の方に囲まれて育ったら、まっすぐ育つんだろうなと心から思いました。

戸田先生・吉原先生、黒島はまゆう学園のみなさま、どうもありがとうございました。

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