タコノ葉細工で感じる小笠原スローライフ

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島のあちこちに自生している、固有植物の「タコノ木」。

アダンの一種で、その名の通り気根がタコの足のように分かれています。

いまにも動き出しそうな、不思議なカタチ。

自由気ままに成長するタコノ木は、島のシンボル的な植物です。

小笠原では、タコノ木の葉っぱを素材とした、ブレスレットやバッグなどの「タコの葉細工」が作られています。

でも、葉は細く長く、縁は鋭い鋸歯。

この野生的な葉がどんな作品になるかというと……!

触ると痛く、深い緑色だったのが嘘のよう。

白くなめらかに加工された葉で編んだカゴは、爽やかな印象なのに、強度も兼ね備えた優れもの。

このバッグは島内のお店で買いましたが、島で持っている人はほとんどが自作。

使うほどにつやが出るそうで、持ち手を修復しながら20年以上使い続けている人もいるそうです。

 

島の友人が、タコノ葉細工作りを教えてくれることになりました。

初心者なので、目指すはマンガ単行本サイズのミニバッグ。

でも、編むのは「工程の最後の仕上げ」とのこと。

タコノ葉を白い素材にするまでに、何ヶ月もかかるそうです。

まずは、刈ってきたタコノ葉の鋸歯をハサミで切り落とし、小さくまとめて、庭先の鍋で1時間以上煮ます。

コーヒーとお菓子をいただきながら、通りかかる人とおしゃべりしながら、グツグツと。

ゆったりと時間が流れていきます。

その後葉先をまとめて、フェンスに乗せて干して。

この時点では、まだ葉はくすんだ緑色です。

ある程度乾いたら、一本ずつ丸めて洗濯バサミでとめていきます。

きつすぎず、ゆるすぎず、程よく風が通るように。

これを天気のいい日に、外に出して太陽の光に当てます。

夕方はとりこんで、翌朝また外に出して、何日も何週間も気長に干し続けます。

雨に当たってしまうと、湿気でカビが生えてしまうので、外出中も気が気ではありませんでした。

天気が続く時期には、島のあちこちで、クルクル巻かれたタコノ葉を見かけます。

2か月ほど経過して、やっと中央部分が淡い色になってきました。

今度はこれを「製麺機」に通します。

圧力をかけることで、葉の厚みが均一になり、質感もソフトに。

不思議なことに色も少し白く変化します。

「製麺機」は現在市販されているものではだめで、昔流通していた特殊なものでないと、きれいにできないとのこと。

それをさらに白くするため、再び干し続けます。

ここで、ふちかがりと持ち手に使う葉の準備もスタート。

今度はタコノ葉ではなく、シマダコという外来種を使います。

タコノ葉に比べて柔らかいので、細かな部分の細工に利用されているとのこと。

こちらも茹でて、巻いて、干して。

初めてから4ヶ月、やっと「編む」スタートラインに立つことができました。

まずは自分で設計図を起こして、編んでいく葉の幅を決めます。

手作りの「ブサキ」という道具を使い、8mm、10mmなどの幅に割いてハサミでしごき、編みやすいよう柔らかくしていきます。

型紙の上に葉を置いて、いよいよ最終工程スタート。

葉はよく見ると表と裏で質感が違います。

より細やかな方を表に出るように意識しながら、丁寧に編んでいきます。

まず底を編んで、型となるマンガの単行本を置いて周囲を立ち上げて。

より丈夫に、仕上がりもきれいにするため、同じものをもうひとつ作って2重にして、重ね合わせて縁かがりします。

編んでいる途中で葉が折れてしまったり、目がずれてしまったり……苦戦しながらゆっくり1ヶ月ほどかけて、ミニバッグが完成しました。

網目の数を間違えて慌てたこともありました。

縁かがりの葉が足りなくなったこともありました。

長い時間の末、生涯大事に使いたい一品を生み出すことができました。

 

タコノ葉細工は、もともと小笠原の先住民族が作っていたもの。

日本による開拓が進んだ明治中期には、小笠原の特産品となりました。

昭和10年には日本橋三越の「小笠原物産展」に出品されたこともあるそうです。

太平洋戦争により、その伝統は途絶えてしまいましたが1968年の小笠原返還後に徐々に復活。

「タコノ葉細工研究会」や、個人により、今に伝統は引き継がれています。

タコノ葉細工のブレスレットや雑貨などは、島内のおみやげ屋さんでいろいろ手に入ります。

素朴なものもあれば、カラフルな色で染めたブレスレットや、ドリームキャッチャーなども登場しています。

工業製品ではなく島民の手作りなので、どんなものに出会えるかは縁次第。

父島の「あすか工房」さんや、母島の「ロース記念館」では、手作り体験も可能です。

タコノ葉細工をお持ち帰りして、日常でも島のスローな時間を感じてみてください!

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