五島出身の山本二三氏が語る、五島列島の魅力。vol.1

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山本二三氏「旧五輪教会のスケッチ会」(五島百景より)
山本二三氏「旧五輪教会のスケッチ会」(五島百景より)

「天空の城ラピュタ」や「もののけ姫」など、数々の名作アニメの背景画を手がけてきた、美術監督の山本二三(やまもとにぞう)氏。
先日、氏の出身でもある長崎県・五島列島をテーマとしたイベントが開催され、リトレンゴ編集部スタッフも参加させていただきました。

今回はそのイベントの中で行われた、山本二三氏が制作している絵画群「五島百景」や五島列島の魅力についてのトークの一部をご紹介します。

五島の海の美しさと、海を取り巻く現状

五島の海
五島の海

五島列島は海が本当に美しいですね。
こういった海が美しいところも、「五島の絵を描こう」というきっかけになったんでしょうか。

山本二三氏
山本二三氏

そうですね。
ただ、はまぐりが獲れなくなったと聞いたんですよ、砂浜で酸欠状態になって。
全国的にあるみたいで、ビニールのゴミとかがいけないらしいですね。何とかしたいですけど。ウミガメもあまり来なくなったと言っていましたね。
本当に海は綺麗なんですが。

人が少ないからこそ綺麗、という面もあるのかなと。

山本二三氏
山本二三氏

ええ、今、五島は人口が減っていて危機的な状況にあるんですが、そのせいで車の数も少ないというのもありますね。
観光客の方達には、ぜひ来て欲しいですけどね。

それと例えば、昔から古代林と言われている奈留島の権現の森、「魚つき林(うおつきりん)」と言われる森でしょうか、それを地元の方々がすごく大事にしているんですね。
椎木とか樫の木とか、そういった常緑樹が栄養分を含んで流れている海なんです。

※魚つき林(うおつきりん)とは
漁村の人々は、長い経験の積み重ねから、森と海の環境はつながっていると信じ、海に深いかかわりを持つ森林を「魚つき林」と呼んで大切に守ってきました。
明治44年の農商務省水産局の調査でも、沿岸に鬱そうとした森林がある場所は好漁場があり、森林の荒廃した場所では魚が近づかなくなった事例が多く述べられています。
(出典:農林水産省

下五島・福江島の海
下五島・福江島の海

五島列島の海の色は、どんな色なんですか?

山本二三氏
山本二三氏

下五島は、緑っぽい海の色はしていないんですよ。
どちらかというと、エメラルドっぽい。
上五島の海の色はビリジアンで、グリーンが透明っぽいですね。

五島出身・山本二三氏ならではの、湿度の高い森

絵を描くときは、植生も描き分けたりするんでしょうか。

山本二三氏
山本二三氏

描き分けるんですけど、僕は南の出身だから、どうしても描く絵の、湿度が高い。
宮崎駿さんにも「君の葉っぱは、ツバキの葉っぱみたいだね。肉厚だ」と言われるんですね。

一方、トトロの美術監督を担当した、秋田出身の男鹿和雄さんは「白樺みたいだね」と言われる。さらさらっとした、湿度感のない空気が描けるんですよ。

そういった描き分けは「もののけ姫」のときもベースになっているんですか?

山本二三氏
山本二三氏

そうですね。
アシタカが、最初は東北にいて、サラサラした木のほうを男鹿和雄さんが担当するんですけど、アシタカが南の方に行くと、だんだん鬱蒼とした森になってきて、植生が変わってくる。
そこを僕が担当していましたね。

山本二三氏
山本二三氏

そういえば最近、吉永小百合さんと男鹿和雄さんが一緒に詩画集を出したんですよ。
男鹿さんが長崎を描いていて、僕にその本を送ってくれたんですけど、電話で男鹿さんが「・・・長崎に見えるかい?」なんて聞いてくるんですね(笑)
「見えます!」
「・・・なんか東北っぽいなと思ったんだけど・・・」
「いや、見えます!」って言いましたね(笑)

そういったことは、お互いに気にするんでしょうか(笑)
例えば、二三さんは南の出身ですから、故郷では雪がそんなに降りませんが。

山本二三氏
山本二三氏

僕が雪を描くとね・・・、
はっきり覚えてるんですけど、YS-11が福江空港に降りたのを初めて見に行ったとき、雪が降ってたんですよ。

飛行機のYS-11ですね。

山本二三氏
山本二三氏

そう、畑の雪の中を走って。4、5kmは走りましたかね。
でも帰りには溶けているんですよ。
僕が雪を描くと、そういうすぐ溶けそうな雪しか描けないんですよ。

一方、男鹿和雄さんなんかが描くと、さらさらしたダイヤモンドダストのような雪が描けるんですね。

福江島、高浜海水浴場
福江島、高浜海水浴場

やはり、どういう所で生まれ育って、どういう景色を見てきたかとか、どういう湿度や気温を感じてきたかというのは、絵にも出るんでしょうね。

山本二三氏
山本二三氏

出ると思いますね。
身体もそうだと思います。

東北とか北海道の方々は、寒くてしばれる(厳しく冷え込む)日に、「気持ち良い」ってよく言いますよね。

それが我々の場合は、福江空港に降りると、海風の湿度の感じが物凄く嬉しいんです。身体も髪の毛も、喜んでいるような感じがするんですね。
そういうのは、あるのかもしれないです。

(vol.2に続く)
インタビュアー/絵映舎・山本鷹生氏 取材・文/リトレンゴ編集部

山本二三氏プロフィール

山本二三(やまもとにぞう)氏
山本二三(やまもとにぞう)氏

1953年6月27日生まれ。長崎県五島市出身。

子どもの頃から絵が得意だった山本二三氏は、岐阜県立大垣工業高校で建築を学び、美術系専門学校在学中にアニメーションの美術スタジオに勤務しました。その後、テレビアニメーション「未来少年コナン」(1978)で自身初の美術監督を務め、以降、「天空の城ラピュタ」(1986)、「火垂るの墓」(1988)、「もののけ姫」(1997)など、美術監督として数々の名作に携わりました。

2006年、アニメーション映画「時をかける少女」で第12回AMD Award’06 大賞/総務大臣賞を美術監督として受賞。

2011年夏、「日本のアニメーション美術の創造者 山本二三展」が神戸市立博物館で開催され、来場者約8万5千人という盛況を博しました。その後、全国で巡回され累計入場者数60万人を突破。2017年現在も巡回中です。

画集等の著書多数。近著は「DVD付き絵本 希望の木」(原作・文 新井満、絵 山本二三、東京法令出版)。現在も美術スタジオ「絵映舎(かいえいしゃ)」代表として、アニメーション映画「希望の木」の準備を続けており、自身のライフワークでもある、出身地の五島列島を描く「五島百景」にも挑戦中。迫力ある独特の雲の描き方はファンの間で「二三雲」と呼ばれています。

五島市ふるさと大使/京都造形芸術大学 アニメディレクションコース客員教授
東京アニメーションカレッジ専門学校 講師

絵映舎公式サイトはこちら >> http://www.yamamoto-nizo.com/

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リトレンゴ編集部 日野
海なし県在住のIT企業戦士(なんでも屋)ですが、対馬の方と出会ったことをきっかけに、アイランダーやマルシェなどのお手伝いをさせていただき、おかげさまでこの離島専門メディア「リトレンゴ」もスタートさせることができました。島でお世話になった方々へ、少しずつでも恩返しできるよう頑張ります!